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葦原今昔

クゲヌマラン 千葉県 絶滅危惧種 4月 海浜植物


昨日今日と割と海沿いにあっちこっち動きました。

こちら手入れ作業後の打ち合わせ前に立ち寄った人工海浜の林床にて。

クゲヌマラン(鵠沼蘭)が咲いていました。


千葉県では一度絶滅の判断後、再発見→個体数爆増という珍しい例。

ちなみに下は同じ林床で見られたホウチャクソウ(宝鐸草)の充実した株です。


その足で、以前お庭の改修工事をさせていただいたF様宅へ追加工事の打ち合せへ。

廃材を使った前庭はとても良い雰囲気になっていました。
愛情をビシバシと感じられてとても嬉しいです。


トベラ(扉)やシャリンバイ(車輪梅)など、意識して植えた低木も良い塩梅。
これからまた、どのような表情に変わっていくのか私も楽しみです。


事務所近くでの打ち合わせへ向かう前、なんだか気持ちが引っかかってしまい寄り道。

こちら市原市を代表する河川である養老川、旧河口付近に残る小さな干潟です。
例によって比較地図のっけます(クリックで拡大します)


葦原の中にシオクグ(塩莎草)、テリハノイバラ(照葉野茨)、ツルナ(蔓菜)などの花。
いずれも塩生湿地や干潟、砂浜などの海近くに多く観られる植物です。

ちなみにツルナは別名ハマヂシャ(浜千舎)といい、海の食料としてメジャー。


他、ハマウド(浜独活)、ハマヒルガオ(浜昼顔)、ハママツナ(浜松菜)、クコ(枸杞)などがよく目につきました。


同じく市原市内、椎津川の旧河口付近へ。

もはや河口は無く、干潟らしい干潟ではありませんが豊かな植生がわずかに残ります。

市原市 干潟 シバナ


その一つがこちらシバナ(塩場菜)です。

全国的に衰退著しい塩生植物であり、千葉県はもとより関東地方最後の自生地となっています。

以前に秋の野の花というブログで少し触れています。


かつては若芽を食用にするぐらい身近な植物だったようです。
残念ながら、現在の市原市において、かつての遠浅の海を感じられる場所はもうありません。

ともあれ、葉っぱを少し齧ってみる。

美味しい。塩の香りが広がるというか海の味だ・・。


でも、投棄されたごみの中に埋もれるように生えている様子を見ると、進んで食べようとは思わないな・・泣

当然ながら最重要保護生物なので採取は厳禁です。

小櫃川河口 盤州干潟


本日、君津市へ打ち合わせへ伺い、その帰り道に小櫃川河口干潟へ向かいました。
もうこれは必然。ちなみに東京湾少し下って木更津市にあります。

昔と今の小櫃川の流れを見ると、結構変化していて驚きます。
特徴的な◎は頓挫した浸透実験池跡とのことです。


広大な葦原と泥地が広がる塩生湿地となっています。

ちなみにヨシ(葦)とアイアシ(間葦)がそれぞれ住み分けているようですが、今の時期は両者の違いがまったく判らず。

うーん、茅葺材料の宝庫ですな・・。
毎年生えてくるし、材料として完璧です。

そして3密どころか超過密状態のカニたちが動き回る。
写真はアシハラガニ(たぶん)。


もう完全に遠浅の極致。

かつての東京湾の美しさがここには残っています。
遠くに丹沢の山並みも見えます。

南方面に突き出た小山があり、黒松(たぶん)が立ち枯れた様子が目立つので行ってみる。


やはりクロマツ(黒松)で、成木の9割は枯死していそうです。


それでも実生の稚木もちらほら観られます。


このほとんどが立ち枯れた様子を酷い景色とは思わず、その先を想像してほしい。

衰退した原因を遺伝情報に叩き込まれた次世代は生き残ります。


先だって飲んだり美味しくいただいたクロマツの新芽。

野木らしく花も良く咲く。上が雌花で下が雄花です。


林床はマサキ(柾)、トベラ(扉)など、らしい低木層が優占しています。
下はその中に見られたシャリンバイ(車輪梅)の花。


海際から、ハママツナ(浜松菜)とマツナ(松菜)、シオクグ(塩莎草)、コウボウシバ(弘法芝)、ハマヒルガオ(浜昼顔)とハマエンドウ(浜豌豆)、ハマダイコン(浜大根)です。

当地ではかつてハママツナが大きな群落を作っていたそうですが、現在は衰退しているそうです。


最後に、鳥の楽園となっていた浸透実験池跡を覗いてきました。

ウミウでかいな。


もうひとつ、こちらの植物の名前がどうにもこうにも解りません。

満潮時に海に浸かるような干潟最前線に生えていました。
どなたかご存知の方お助け~。


さて、干潟を出て後背のかつて湿原だった田んぼへ。
小川ではクロメダカが沢山泳いでいました。


先ほど少し書いたように、ハママツナの減少など干潟環境も少しづつ変化しているようです。

悪化と捉えれば、ちょいちょい写る大型宿発施設の建設が原因等も言われているようですが、そんな点の事象よりも・・。

川から運ばれる土砂の供給量が減れば干潟は衰退するし、流域上の方の地中の環境が変われば干潟の表層の環境がいち早く変わるように思います(逆も然り)。

自分が絶滅危惧種に目を向ける理由の一つに、有事の際のバックアップは多くなければならないというドライな考えがあります。


干潟近くの小櫃川沿いでは、大きく宅地造成が進んでいます。
左手に写るのは今後オープン予定のコストコ木更津金田倉庫店。

こんなに新築住宅を建ててどうするんだろうというのが正直な気持ち。

あくまでも私見ですが、あと10年で新築住宅という概念は廃れ、いわゆるハウスメーカーは転業を余儀なくされると思います。

自分は庭に携わる仕事をしている手前、これから何が求められるのか、時代の変化に合わせて常に模索していきたいと思います、というのは建前で、とにかく好きなことにどんどん突っ込んでいきたいです。というのは冗談でその両方です。

 


新たにお庭の改修のご依頼をいただいたお宅にて。
しっかりご提案させていただきます!

さて明日もいつもどおり頑張ろう。


長々と失礼しました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた忘れたころに。

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コメント: 1
  • #1

    cozyforest (木曜日, 08 6月 2023 11:10)

    名前がわからない植物(わたしもわかりませんでした)について、知り合いに尋ねてみたところ、ウシオハナツメクサかもしれない、とのことでした。ご参考までお知らせします。