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筆竜胆と苔竜胆と春竜胆


朝、近所のフィールドを散歩。
ハンノキが茂る湿地にて、カサスゲが花穂をつけていました。
編み笠の材料として利用されてきたスゲの仲間。


ハンノキ林の谷津から連なる草地、いやあえて草原と呼びたい台地にはフデリンドウやクサボケの花が咲いていました。フデリンドウの横に見える葉っぱはタチフウロ。

そういえば以前日記を毎日書いていた頃にこの草原のことを何度か書いていますが、昨年にタチフウロの花とやっと出会えました。
他にも特筆すべき植物に出会えたのでいくつかを以下に載せます。


同じ時期に見られたタチフウロとスズサイコ、およびマキエハギの花。
それぞれ千葉県では絶滅危惧種に指定され、とりわけスズサイコは市内で初めて出会えたぐらい希少。花は夜〜朝方に咲きます。


カナビキソウとシロヘリツチカメムシの幼体。

この草原はある程度地形の起伏があって、特殊な菌類と共生する要素が強いマメ科の植物の種類(ネコハギ、ミヤコグサ、コマツナギなど)が多いのが特徴。マメ科の植物は土壌の窒素固定能に優れます。平らではなく起伏のある地形は地中の気圧や水圧を分散させるのに好適。カナビキソウは他の草本に依存して育つ半寄生植物であり、更にそのカナビキソウのみを食草とするシロヘリツチカメムシが見られ、こちらは環境省指定の準絶滅危惧種にもなっています。


春が終わった頃に見られるレンリソウと真夏のカセンソウ。
生き物同士が支え合う姿が感じられる奇跡的に残った希少な環境。


ただ、何やら心配になる杭がいくつか。。

送電線鉄塔の改修作業のようで工事が始まっています。
できる限り配慮がされた工事を望みます。お願い市原市。これ以上愚かにならないで。

 

以前にもおんなじようなことを何回か書いていますが、私が希少種の重要性についてあれこれ言うのは可哀想だからとか好きだからとはちょっと違います。生態系というのはとても大きなシステムだけど、その中にキーストーン種と言われるものや生き物と生き物をつなぐ大事なものがいます。もし絶えてしまった生き物がそんな存在だったら、歯車が大きく崩れて人間が生きていくことが難しくなる可能性があります。有事の際にリカバリーできる要素は出来るだけ多く。綺麗事抜きでまずは人間主観です。


そんなこんなで、新規のお庭工事のご依頼をいただいた打ち合わせで各所をまわる。
まずは木更津市の新しい住宅地に建てられたお宅へ。
近くに古そうな道があったので少し散歩してきました。

路傍の石仏と畑沢川。


林縁にて目に留まったキランソウ、ウラシマソウ、ヒメウズ。
ヤマツツジが見られるあたり、山が近い環境にあることをより感じられます。


シロバナタンポポと近代の外来種であるセイヨウタンポポの混生。
カントウタンポポは見られず、どのように住み分けているのか興味深いです。


河畔に育っていた大きなイロハモミジ。
新緑の葉っぱを展開させるとともに、小さな花をたくさん咲かせていました。


ちょっと海沿いに移動して先日工事が完了したK様のお庭のメンテナンスへ。
土中の通気と透水状況。


シロヤマブキやジューンベリーが咲き始めていました。
お客さんの手で池には水草も。賑やかになると良いですね〜☺️


市原市の南の方へ移動して打ち合わせ後、梅ヶ瀬川を少し歩いてきました。
道を外れて割とざぶざぶと。普通にハイキングしている方からやや奇異の目で見られていたかも。。派手なカラーリングのハンミョウが飛びかっていました。


林縁の明るい崖地にてコケリンドウとカントウタンポポ。
見上げるとマルバアオダモが花を咲かせている様子も見られました。

庭を作る時に私がよく植える木にアオダモがありますが、それと近縁種になります。
ただ、ずーっと気になることがあり、アオダモは東北などやや寒冷地に分布するものであって、千葉には自生していないんですよね。。かといってマルバアオダモを植木として生産販売しているところは皆無。里山整備と併せて植木生産できたら良いのだけど。また、千葉にはマルバアオダモの他に近縁種のトネリコが自生しています、戸に塗る木が訛ってトネリコ、漢字で梣と書きます。

昨今、南アジア原産の常緑樹であるシマトネリコが庭木としてあちこちで植えられていますが、個人的にお勧めしません。成長が旺盛で、気候にも風土にも合わず枝葉が不自然に暴れがちな姿をあちこちで見ます。何にも考えずに人気だからという理由でおすすめされている様子を見ているととても心配。

自治体によっては規制され始めていて、東京都の板橋区では昨年、生態系に悪影響を与える恐れがあるとのことで、植栽および生産が全面禁止となりました。

元々自生していた野草の生息地の多くを奪ってしまった(見方によっては見事な生存戦略)菜の花:セイヨウアブラナの件もそうだけど、まるでゾンビみたいな世の中。もう少し思考性のあるバランスが求められる。


東金市にてお手入れの打ち合わせ後、ハルリンドウの花を見に行ってきました。
下の写真はカナビキソウ。

一日で春に咲くリンドウを3種類も見られて幸せ。
カナビキソウも含め、光合成だけに頼っていない栄養繁殖をするお姿。

普通に種を撒いただけでは発芽せず、移植も困難な植物です。

特定の菌根菌はもちろん、さまざまな糸状菌類と共生構築されているネットワークでは膨大な情報交換が行われています。除草剤などが撒かれると菌類がダメージを受け、あっという間にその知恵ごと失われます。

人間が壊してしまうのは容易いけど、人の手で復活させるのは難しいどころか不可能、そして自然回復には数百年単位の膨大な時間を必要とします。


こうした環境を大切にしていきたいですね。

↑参考までに。


おまけ、図書館に本を返却ついでに更科公園を少し散歩。
新しく作られた池の周りでサギゴケが今年も花を咲かせていました。